ふらっと暦 文月
倒れてから十五年。その時のことは直前からほとんど覚えていない。
助かったのがわかったのは病院。やった、生きてたって。
しゃべれない。右手動かない。皆が何を言っているかもわからない。
急に倒れて仕事に穴をあけて迷惑をかけた。同僚みんなが自分の穴を埋めてくれた。あまり言わないけれど、その頃のことを思うと今も胸が熱くなる。
若いころから演歌が好きで、「珍しいね」とよく言われた。レコード会社に就職でき、営業を経て念願の制作担当になれた。担当したアーティストが売れたときは嬉しかったね。ファンだった前川清さんの担当になれたことが一番嬉しかった。新しいベスト盤の選曲を担当したときは、「お前の好きな曲ばかり集めたんだろう」と言われた。
倒れた後、コンサートに行き、楽屋に挨拶に行ったときは喜んでくれた。この仕事をしてきてよかったと思った。出来なくなったことも多いけれど、仕事でやってきた経験と自信、得た仲間が励みになり頑張れた。
これからも何があるかわからないけれど、今、していることが、いつか未来の自分の応援団になるのかも。
ふらっとに来てやり始めたことは多い。歌は楽しい。みんなが楽しめることが好きだ。何かやろうよと言われて断らないと自然と楽しいことが集まってくる。
一番感謝しているのは支えてくれている妻。心の中ではいつも言っているけれど、恥ずかしくてなかなか出てこない。倒れる前も後も、妻は変わらないでいてくれる。ありがたいと思っている。
変なこと言っちゃったな。書かれちゃうかな。
二〇二六年 七月
ふらっとメンバー K・Y
(「ふらっと暦」は、利用者の方々の毎日を写真と文章でふりかえる施設内広報誌で、題字は利用者の方の自筆です。表紙のみHPに掲載しています。)


















