いのちをいただく~《海老沢農園》
或る日、福祉を目指す20歳の女性がボランティアで、千歳船橋にあった《ふらっと》にやってきた。聞けば、 「父が脱サラで、おじいちゃんの後を継いで、有機農業を始めたんです。父の農業って、超~貧乏なんです。買ってくださいよかったら!」
と語るボランティさんに、「もちろん、新鮮で安心な世田谷産の野菜が頂けるなんて最高!」その日から、定期的に、野菜を取りに海老沢農園へと、足を運んだ。手のかかった、野菜の味は格別で、私たちは、まさに作り手の顔が見える地産地消を始めていた。更に、畑仕事でよければ…と高次脳機能障害の人に仕事の道も開けてくださり、繋がりは深くなっていった。
ところが、ある日海老沢さんから電話がきた。
「野菜が作れなくなりました。白血病になったようです。ごめんなさい」
と。返す言葉はどこにも見当たらなかった。土壌を変え、有機農業を宇奈根で広げようと精魂こめて取り組み始めた矢先のこと。病魔は恐ろしいほどのスピードで海老沢さんの命を奪って行った。そして、1年が経とうとした或る日、奥さんから連絡がきた。
「私ね、主人の後を継いで有機農業やってみようと思うの」
とのこと。ご主人が残した、膨大なノートとご家族が力を合わせて苦労の道を行くと云う、そこには海老沢さんの遺志がきちんと続いていた。
2012年7月。今日も、
「できたよ!美味しいトマト取りに来れる?」
との連絡。まるで宝石のように輝いている野菜は、まさに「いのちをいただく贅沢」。みなさんも、味わってみませんか?
記事一覧へ