新しい時の過ごし方

2018年7月23日更新

つれづれを記すようになって二十年が過ぎた。

ケアセンターふらっとを通じて、様々な出会いがあり、その人数は千人を超える。皆人生の途中で大きな事故や病気に見舞われ、まさに命の淵から家族、大切な人の思いの綱を手繰り寄せることができた生還者である。

しかし命と引き換えに失ったものも大きい。手、足、言葉。高次脳機能障害と目に見えぬ後遺症も加わる。毎月「つれづれ」を記すたび「私だったら…」という思いに駆られる。しかしその思いは瞬時に消える。それは一人ひとりの命の再生とも思える新しい毎日に臨場することが出来たからだ。

 今日もケアセンターwith、ふらっとのメンバー六人と高田馬場にある日本リハビリテーション学院へ向かった。待つのは作業療法士学科三年生。現場実習前に、障害当事者の方々と面接する練習を引き受けたためである。六名のメンバーはみな片麻痺がある。

昼食を囲みながら「どうします?厳しく対応する?いやぁ、褒めて伸ばすでしょう、辞められても困るよね」と大人の会話が飛び交う。そしていざ講義会場へ向かうと、ひとりを八人の学生が囲む。皆さっきの冗談はどこへやら。真剣に学生に語り、応じる。見渡せは全員が涙しているグループもある。六人の方々の伝達力は素晴らしく、惜しみなく自分たちの力を若い学生に注ぐ。今の自分をさらけ出しながら。

皆決して障害を克服したわけでも、受容しているわけでもない。ただひたすら、自分の生きてきた道を志ある若者に伝える使命を誠実に、役割として果たしている。講義が終わった全員の顔は少しの疲労と安堵があった。私も六人の方々と共に生きていることに誠実に感謝してペンを置くことにする。


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