ゆっくり時間をかけて手にする今
2013年7月23日更新
出会った8年前、とにかく若かった。その若さは、痛々しいほどだったことを昨日のように覚えている。
お尋ねすると、大学3年の大晦日、アルバイト帰りにトラックに巻き込まれたとのこと。命は取り留めたものの奪われたものはあまりにも大きく、瞬間の笑顔。その後は首を下げるしかできなかった。初めてKさんの心に出会ったのは、1年後自身で描いたイラストだった。ご自身を思わせる顔には「涙」が流れていた。
言葉を発することも奪われた彼女の心には深い悲しみの「言葉」が存在することを知った。
時を経て、在宅生活を様々なメンバーがチームとなって支援した。Kさん自身も持ち前のパワーから、次々に変化を見せていった。
すべてが元に戻ることはない。高次脳機能障害という後遺症を抱えながらも、Kさんが進む道には、沢山の可能性が花開く。
今日もKさんは電動車いすを操作して、街へ繰り出す。「ちょっと休まない?」
「…。」
街をどんどん進む。人混みも、車も随分上手くかわせるようになった。きっと私たちが初めて自転車で風を切ったような気分なのだろう。新たに手にした乗り物を駆使して、夢は膨らむ。そう、Kさんならきっとできる…例え時間はかかっても。
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