門出

2012年12月20日更新
 

最近、街でよく見かける「AED」。自動体外式除細動器(じどうたいがいしきじょさいどうき)。この普及により病院以外の場所で心停止して倒れた人が、AEDで電気ショックを受けるまでの時間が8年間で半分以下になり、救命率は倍の3割になったとの記事を読んだ。 私は、自立機能訓練グループの小林さんを思い出さずにはいられない。通勤途中電車内での心臓停止。幸い駅に到着時だったことから、このAEDを活用され九死に一生を得た。小林さんの心臓停止は、それだけではすまなかった。脳にも酸素が届かなかった時間があり、後遺症として「高次脳機能障害」を残した。

 ケアセンターふらっとを利用するに当たりお話を伺うと、
 「いやー生命保険会社の営業マンがこれですからね。しゃれにもなりませんよ」
と苦笑いされる。今後の希望は?と伺えば、
 「出来れば会社に戻りたいですよね、まだ子どもも学生ですし」
と表情は一変して深刻だった。
 高次脳機能障害は、身体の運度機能に障害を残さなくとも、計算、記憶、思考などに幅広く影響を及ぼす。車いすや杖がないとなかなか障害者として理解してもらえないことも現実だ。或る日、ふらっとでのリハビリを続けながら、小林さんと復職願の面接に会社へ同行した。上司は、
 「いやぁ、よかった。元気じゃない、元通りだね。」
と言われる。何度も何度も言葉を変えて説明するが、
 「そうですかー大丈夫そうですよね、見た感じ。」
となかなか理解を得られない。背広姿の小林さんは、確かに営業マンそのもの。伺えば出勤後、電話の営業が百件を超え、それから外回り…。おそるおそる、
 「こんなハードな仕事へ戻るんですか?」
と聞くと、
 「いやー楽しいですよ、新しいお客さんに出会うのは」
と明快な答え。天職の様に語る小林さんに迷いはない。今年の猛暑も背広姿で、無給の試し出勤。雨の日も、風の日も仕事が終われば、夕方からふらっとで更にリハビリを継続。そして見事この12月に、営業職ではないが復職を果たした。
 おめでとう!小林さん。まさに幸運の上に努力が実り成果を手にされた。私たちにとってもひと足早いクリスマスプレゼントです。

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